トスカーナ ワインの旅 〜サッシカイア編 |
先日、トスカーナでワインのセレクトを得意とするW社のジャンニからワイナリー巡りツアーのお誘いが来ました。
テイスティングツアーは何十種類ものワインを試飲してそれぞれの特徴をヒアリングするため、なかなかハードなのですが、「今回は半分バカンス気分でおいでよ」とのことだったので、金曜から一泊ででかけることにしました。
ミラノから車で走ること、4時間。
フィレンツェまでは時間的には車よりフレッチャロッサなど新幹線が早いですが、その後トスカーナ丘陵地帯を廻るとなると車のほうが便利なのです。
待ち合わせの場所はとあるアグリトゥーリズモ。
広大な土地にレストランと宿泊施設を備えたCIPRIANA家。
白一種類、ほか数種類のキャンティなど赤をメインにつくるワイナリーです。
到着したときは、すでにこのツアーに前日から参加しているグループがCIPRIANA社のワインテイスティングを終えているとことでした。
軽く全員と挨拶をし、再び出発です。
ちなみに今回、予定表のようなものは用意されていません。
いかにもイタリアですよね。笑。
イタリアでは予定表なるものの存在があまり重要視されていず、例えば学校の運動会のお知らせなども日時だけは書いてありますが詳しい予定などはまったく記載がないことがほとんど。
今回は待ち合わせ場所だけ、しかも村の名前だけを知らされていただけ。電波の悪い田舎でジャンニとの電話連絡に苦戦しつつ、やっとの思いでたどり着いたわけでした。
どこへ連れて行かれるのかも分からないまま、車に付いていくと・・・。
ORNELLAIAの表札!
なんと、スーパートスカン三大ボルゲリのうちの一つ、あのオルネライアです!
すごい!すごい!
さすがの門構え、門からエントランスへつづく小道が果てしなく長くて圧倒されます。
前を見ると、BOLGHERIという道路標識。
ここでボルゲリについて少々説明を。
トスカーナ州リヴォルノ県にある村で、海のイメージのリグーリア州に近いエトルリア海岸に面しています。
最近のスーパートスカンで急に注目された村のように感じるボルゲリですが、実は古代エトルリア時代からワインが作づくりが盛んだった場所。
ワインと海、あまり関係性がないように感じるかもしれません。
でも、古代の土壌と海・河川から運ばれる土壌が入り交じり、ワイン作りには最適な土地。一口にボルゲリと言っても、どのワイナリーの畑も性質が異なりワインの味わいが異なるのはこのためだと言われています。
典型的なトスカーナのうつくしい道。天にのびるこの樹木はトスカーナでしか見かけません。
ほどなくボルゲリ城です。
こぢんまりとしていて、親しみやすい佇まいの古城です。
小さな城下町、ボルゲリ村の中心街に車をとめて散策。昼食の時間です。
ヨーロッパからのツーリストが多く、素敵な土産物屋もたくさんあります。
この日は本当に天気がよく、どこのレストランも屋外へテーブルを並べています。
ジャンニのお気に入りレストランへ。
オーガナイズしているジャンニとソムリエのイザベルの他は私たち招待客。総勢10名ほどです。
L'UVA NERA=黒ブドウという名のレストラン。
まずは前菜。
トスカーナ産のプロシュット、サラミ、トマトのブルスケッタ、そしてレバーのパテのブルスケッタ。
どれも素朴ですが、やはりトスカーナといったらこの3つです!
プリモはチンギアーレ(イノシシ)のラグーで和えたパッパルデッレ。
イノシシのラグーはトスカーナの名物です。
様々な部位の肉を赤ワインでじっくり煮込んだソースを、幅広の手打ちパスタにしっかりからめていただきます。
ちなみにランチタイムも無駄にせず、しっかりワインテイスティング。
まず2種類のプロセッコから始まり、その後白、赤と続きます。
MORAIAというワイナリーが白も赤も安くて気になりました。
ちなみにボトルの奥の綺麗な女性はソムリエのイザベル。
セコンドはグリリアータ・ミスタ。
豚、地鶏、手づくりサルシッチャ、牛肉を炭火で焼いたミックスグリルは、どれも地元で飼育された肉だけを使用しています。
どれも最高ですが、地鶏の旨味が凄いです!
ほどよく脂が落とされて、しかも肉はふっくら。炭火の力でしょうか。
好みで岩塩をふりかけていただきますよ。
本当はがっつり食べたかったのですが、私の場合お腹いっぱいになるとワインの味がよくわからなくなるので、プリモは一口だけで我慢!お肉も各種1口ずつ味見で、あとは旦那様へ!泣。
車に乗り込み、次の目的地へ。
どこに行くのでしょうか・・・私としては予定が知りたい・・・。
サッシカイアの標識。ふうん。ボルゲリだもんね。。
そして見えて来た大きな門。
大きなレンガの建物を越え、やっとエントランスへ。
どこにも標識やワイナリー名がありません。
エントランスすぐに、天井がたかく広々としたテイスティングサロン。
ワイナリーでは見たこともないスタイリッシュで洗練された空間です。
壁を見ると・・・・何とSASSICAIAの写真!!!!
そう、ここはサッシカイアの作り手、テヌータ・サン・グイド社だったのです!
サロンの両脇に、2つの熟成庫。
こちら2012年ものの樽。あまり大きくないフレンチオーク樽が並びます。
毎年の生産量は約20万本。とくに猛暑だった2012年はぶどうを守るため約30%の房を切り落としたそうで、30%マイナスの生産量です。
サロンを出て、醸造所へと案内されます。
こちらステンレスの醸造タンク。サッシカイアは15日間のマセラシオン後、ステンタンクから樽へ移して約2年間熟成させ、ボトリング後も最低8ヶ月の瓶内熟成を経て販売されます。
つぎにボトリング&梱包を行う場所へ。
すべてのサッシカイアは木箱に入れられ出荷されます。すべて手作業です。
こちら現在出荷レディの2010年もの。
サッシカイアは50%が国内消費され、あとの50%は海外へと出荷されます。
主な輸出先はNO.1がアメリカ、つぎにスイス、ドイツなどだそうです。
そしてテイスティング。
サン・グイド社ではサッシカイアの他に3種類の赤ワインも作っています。
2009年のサッシカイア。
色はさほど濃くありません。タンニンを強く感じます。
同行したベルギーのインポーターの話によると、もう少し寝かせたほうがよいそうで、実際にサン・グイドのオーナーに言わせると、10年待ったものが最高だとのことです。
私もいつかそんな舌を持ちたい!
サッシカイアの説明もしないと、ですね。
サッシカイアの生みの親は、競走馬の飼育とボルドーのようなワインづくりに情熱を傾けていたマリオ・インチーザ・デッラ・ロケッタ侯爵。
何とかしてボルドーのようなワインを作りたいと、フランスから持ち込まれトスカーナで栽培されていたカベルネを使ってワインを試作してみましたが、どうにも飲めるような代物ではなかったそうです。
1961年、ついに彼は天才醸造家ジャコモと出会い、1968年サッシカイアを完成させます。
ボルゲリの土地は、このフランス品種の栽培に最適な土壌だったのでした。
これが世界的なワイン専門誌で絶賛され、異例ともいえるDOC認定を受けます。
こうしてサッシカイアは有名になり、ボルゲリの地に次々とオルネライアやグラッタマッコなどがやってきてワインづくりをはじめるようになったのです。
これが、スーパータスカンの歴史です。
こちらはGUIDALBERTO、60%カベルネ・ソーヴィニョン、40%メルロー。
15ヶ月フレンチオークで熟成、瓶内熟成3ヶ月のトスカーナIGT .
こちらも素晴らしいです。サッシカイアとはまったく異なります。
予期せぬ驚きの連続だった一日目。
これからシエナのホテルへ行き、夜はまたテイスティングをかねたディナーです。
自分は今、世界を驚かせたワインを生んだ地にいる。
まだ、ドキドキしています。